そら豆ハート
そら豆ハート。
仕立て屋さんはいつの間に縫い付けていったのだろう。
その黒い縫い糸で。
眠れなくて、1時すぎまで起きていたの。
5時にアラームをかけたはずなのに、ふと目が覚めた、午前4時。
起きた瞬間、けいくんの姿が脳裏に浮かんだ。
いつも寝起きが悪くて、はっきりしないはずの頭が、妙に冴えていた。
すぐに、昨日耳にしたことを思い出してしまった。
ひどく、心が沈んだ。
いつのまに、こんなに意識してしまったんだろう。
もう一度、目を瞑る。
午前5時。やっぱり、いつになく頭が冴えていました。
二度寝の必要もない。
電車に乗り込むと、高校時代の部活動の同期に遭遇。
いつものこの時間なら、眠くて、こんなに元気に話せないはずなのに、不思議。
他愛ない話をして、時々、昨日から人生に絶望してるとか、ポジティブになりたい、とか言ってたら、ちゃんと返してくれる友達。
本を読むといいよ、とか。
「いいなって思う人にはいつも、彼女がいたりして、私ってこういう運命なの?って、絶望してた」って、明るい口調で話す私に、彼女は言いました。
「それは運命の相手じゃなかったんだよ。運命の相手にはこれから出会えるってこと」
よく聞く言葉ではあるけれど、彼女の口から発せられた言葉に、なぜか、気持ちが落ち着かされた気がしました。
9時頃、教室に入った自分が妙に明るいことに驚きました。
「おはよう~」なんて、「今日全然眠くない、けど、たぶん授業始まったら寝るな(笑)」なんて、教室全体に聞こえるような声で、話して笑う自分。
私はまだ、けいくんに恋してない。
今年の冬、春休み、「視野を広げようね」って、大好きなこうさんに言われたときは、そんなの無理に決まってる、りくさん以外見えないのに、りくさんじゃなきゃだめなのに、って思ってた。
それでも、大好きなこうさんの言うことは、何でも聞きいれようとしてしまう私は、段々と、視野を広げる努力をするようになりました。
最初は無理だと思ってた。
でも、最近になって、新しい道が、切り開けた、気がした。
恋してない、まだ。
けいくんは私に優しかったの。
初めてだったの、こういうベクトルで優しくしてくれる男の子は。
私からでなく、そっちから、行動を起こしてくれる男の子は。
りくさんより素敵な人はいないけど、でも、わたしはきっとけいくんと付き合うことになるんだろうなって、予感がしてたの。
彼女がいるかもだなんて、最初から、勘付いてたじゃないか。
なのになんでこんなに傷ついてるんだろって、自分でもよくわからなかったけど、
そういうことか。
同じ学部の同級生とかだろうな~って勝手に思ってたんだ。
それが、予想外の結果だったから、ショックだったのかも、しれません。
大丈夫、まだ恋してない。
運命の相手じゃなかったのかもしれない。
そうだ、まだ私は、視野を広げてる段階だった。
まだ一人に絞ってないよ。
けいくんのことも視野に入れつつ、周りにも目を向ける。
今まで通りでいいじゃないか。
何を今更傷つく必要があるの?
今日のお昼にね、友達にお話し聞いてもらうつもりだったの。
でも、お昼はその友達と、もう一人の友達と、私の三人になってしまったから、結局話す機会を逃してしまいました。
でも、大丈夫。
私は元気だった!
今日は一日、驚くくらい笑顔で過ごしました。
帰りの電車の中でも、にこにこにこ。
この笑顔には、無意識のうちに、自虐的なものが含まれているのかもしれません。
それでもいいの。
ネガティブ女子は辞めるの。
私ね、普通以上のルックスは持っているのに、ずっと、ヒエラルヒー最下層の、顔面偏差値最底辺だと勘違いしてたの。
その間違いに気づけたんだから、自信持って生きられるの。
魅力を見せつけるんだから。
男がみんな、寄ってくるくらいにね!
悲劇のヒロインになりたがっているのかもしれないって、思ったこと、昔から、何回もあります。
幸せになりたい、どうしてなれないの?っていつも泣いてるくせに、変な、矛盾。
それならいっそ、悲劇のヒロインを演じることを楽しめるような女になればいい。
ipodの選曲を、aikoシャッフルから、back numberの幸せにチェンジ。
私は少女漫画のヒロイン。
演じればいいの。
楽しめばいいの。
帰り際に、わざわざ、あの教室の前まで行ってしまいました。
さりげなく、中を覗いて、先生しかいないことを確認して、帰りました。
けいくんがいつもいる教室です。
昨日はね、行くつもりなかったのに、けいくんが、これない?って言うから、会いに行ったんだよ。
授業、遅刻してまで。笑
けいくんと先生しかいなくて、嬉しかったなあ。
いつもは早足で帰りたがるくせに、なかなか、学校から去る気になれなくて、何度も立ち止まってしまいました。
夏が過ぎる前までは、自分の学校に魅力なんて感じなかったのに。
惰性で通っていて、私が充実できる場所は地元だけだと感じてたのに。
結構、というか、大半が、けいくんのおかげな感じがする。
けいくん。
さい